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大阪高等裁判所 昭和43年(く)89号 決定

少年 N・K(昭二五・一一・一九生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

職権をもつて本件抗告申立の適否につき案ずるに、保護処分の決定に対しては少年法三二条所定の事由のあるときに限り許されるものであり、抗告をするには申立書に抗告の趣意すなわち原決定にいかなる法定理由に該当する事由があるかを具体的に明示すべきものであつて、申立書にこれを明示しないでした抗告の申立は抗告の手続が規定に違背し不適法であると解すべく、抗告期間経過後に理由書が提出されても右の違法は補完されないと解すべきものである。

本件記録によれば、原裁判所が少年を中等少年院に送致する旨の決定をしたのは昭和四三年一一月二八日であり、これに対し少年の父N・Iから同年一二月九日抗告の申立があつたが右抗告申立書には「不服につき抗告の申立をする。」旨の記載があるのみで抗告の趣旨を明示せず、その後同月一四日附添人弁護士佐々木哲蔵から同月一四日抗告の理由と題する書面の提出があつたが右は抗告期間経過後にかかるものであつて(もつとも右抗告理由書の日付は同月九日と記載されているが、これが原裁判所に提出されたのが同月一四日である以上、抗告期間経過後であることは明らかである。)、結局本件については抗告の手続が法令に違反するものといわねばならない。(なお本件記録を調査してみても原決定には重大な事実の誤認または処分の著しい不当があるとは認められない。)

よつて少年法三三条一項により本件抗告を棄却することとして主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 児島謙二 裁判官 木本繁 裁判官 今富滋)

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